成長期の膝通 (香川スポーツ1998年10月22日掲載)
子供の筋肉はまだ未発達で強い運動には適さないが、スポーツの英才教育、低年齢化が進み、そのスポーツに必要な部分のみの専門的な練習や筋肉トレーニングが行われがちである。
中でも、小学校高学年から中学生までのスポーツをする子供が、膝の痛みを訴える場合は注意が必要。子供は大人と違って成長の途中にあるので、その痛みの原因は特有である。例えばスポーツをしていて膝に余分な負担がかかった時、大人の場合は筋肉や靭帯に損傷をきたすが、成長期の子供の膝では筋肉や靭帯が付着している骨端軟骨に障害が起きる。(図参照)。
その中で、もっとも多いのが『オスグッド病』。骨端軟骨層は骨端線と呼ばれ、骨が長く成長する大切なところ。この時期は身長の伸びが著しいので、骨の成長に対して筋肉の成長が追いつかない。簡単にいえば、骨より筋肉の方が短いというアンバランスな状態になっている。逆に、強度は、成長中の骨に比べ筋肉の方が強いので、ジャンプやランニングなどで、筋肉や靭帯が付着している骨端部に負担がかかりすぎ、その部分が剥離してくる。
これがオスグット病で、10〜15歳のサッカーやバスケットの選手に多く見られる。膝蓋骨(お皿)の下の骨が突き出し、階段の昇り降りやランニング中に痛みを生じるが、スポーツをやめて安静にしていれば快方に向かう。高校生や大人になっても痛みを伴う時は、手術が必要な場合もある。
成長期に膝の痛みを訴える主な障害を多い順にあげると・・・。
有痛性分裂膝蓋骨 膝蓋骨の外側が隆起し、練習中に痛みをきたす。ジャンプとかキックの時、軸足になる膝に過剰なねじれの力が加わり、筋肉が付着する膝蓋骨の外側上部が疲労し、次第に分離する障害。
ジャンパー膝 頻繁にジャンプするスポーツで膝蓋靭帯に負担がかかりすぎ、膝蓋骨の一部が剥離したり、靭帯部に炎症を生じる。
膝蓋骨亜脱臼・脱臼 膝蓋骨の形に異常があり、それが外側にはずれる障害で、ジャンプ着地した時、膝の外側部に痛みを伴い膝が抜けるような感じがする。
膝蓋軟骨軟化症 膝を着くけがやランニングによる使いすぎで、膝蓋骨の関節軟骨が傷つく。長時間座っていて立ち上がる時や、下り坂のランニング、階段を下りる時に痛みを感じる。
離断性骨軟骨炎 小さな外傷や頻回のねじれ動作で大腿骨に栄養障害をきたし、骨軟骨が壊死し、遊離する。急に膝がはれたり、ひっかかりが生じる。
こうした膝のスポーツ障害や損傷の予防と治療には、次の事項を守ることが大切だ。
○ 成長は個人差が大きいので、指導者らが単にその子の年齢だけで区別して当てはめない。ドクターが診察の上、レントゲン像で骨端軟骨の成長程度を確認、痛みが取れるまではスポーツ活動を制限・禁止する。
○ 活動を再開する時は水泳や軽いジョギングなどから始め、時間をゆっくりかけて徐々に負荷を増し、元のスポーツに復帰する。
○ トレーニング開始前に膝を十分温めることとストレッチングで筋肉の柔軟性を維持するとは不可欠。
○ 筋肉強化訓練は骨端線が閉鎖し、発育が完了(15歳位)してから行う。トレーニング中は、その病気に適合したサポーターを着用し、危険な動作は避ける。
○ 痛みを軽減する鎮静剤は、ややもすると痛みがないと誤解して無理をするおそれがあるので、できるだけ服用しないように。
○ 障害の程度では、手術を必要とする場合もあるが、子供の場合はできるだけ保存的にリハビリ治療していく方法が良い。