テーピング (香川スポーツ1998年9月24日掲載)

 足首や膝の捻挫で関節にグラツキが残り、その後再三にわたって捻挫を繰り返し、スポーツ人生をあきらめる選手が少なくない。これを少しでも救ってくれるのがテーピングである。

 

 テーピングとは、障害を受けたり、あるいは受けそうな関節や筋肉などの周囲をテープで巻き、固定する方法。その主な目的は捻挫の予防、応急処置、障害の治療と再発予防である。そのうち、最も多いのが再発予防のテーピングである。

 

 日々の診療のテーピングで一番多いのは、足首の捻挫。次いで膝の靭帯損傷、手首や指の捻挫、肩の捻挫・脱臼など。また関節の損傷だけでなく、筋肉の肉離れやアキレス腱炎などにも使われる。選手がテーピングで自分の弱点をカバーすることで、積極的に試合に参加し、プレーしながら関節機能の維持と回復を目指すことができるのである。

 

 今回は、テーピングの基本について書いてみる。

 

テーピングには『ホワイトテープ(コットンテープ)』が不可欠。これは皮膚のかぶれが少なく、固定力が強い非伸縮性粘着テープで、あらゆる場合に使える。そのほか皮膚に粘着させる『のりスプレー』、皮膚をテープの糊や摩擦から守る『アンダーラップ』、伸縮性を利用して適度の圧迫を加えて固定し、関節の運動性を保つ粘着伸縮性の『エラスチックテープ』などがある。エラスチックテープの中には、長時間にわたって筋肉の緊張を和らげるキネシオテープがある。

 使用するテープ幅は部位によって違い、手や足の指、手関節の場合は12〜19ミリ、足関節、膝関節やアキレス腱などの場合は38〜50ミリを目安に選択する。

 

 巻き方は一見、複雑そうに見えるが、その基本はアンカーとサポートの2種類である。(図参照)。『アンカー』は、固定したい関節や筋肉の上下、左右に最初と最後に張るもので、『サポート』は関節や筋肉を固定し、圧迫する役割を持つ。巻く時はスポーツ種目や部位によってテープを選択し、関節の形に合わせながらテープの張力を一定にして最後の張り具合に細心の注意を払うこと。特に手足の皮膚の色がおかしくなったり、はれが強い場合は、直ちにやり直すか中止する。一方、テーピングで関節が固定され過ぎると、周囲の筋肉の働きが弱まり、正常な関節の反射機構が低下することがあると言われている。従って、プレー中は出来るだけ簡便なテーピングでバランスの取れた関節運動が出来るようにして、関節周囲の反射機構を正常に保つ必要がある。また、皮膚が負けやすい人はアンダーラップを必ず使用し、かゆみを感じる時は直ちにテープや皮膚に付いた糊などを取り除く。

 

 最後に、大切なのは『テーピングを過信しない』こと。テーピングは予防や再発防止に万能の治療方法とはいえない。まず、筋肉トレーニングや筋肉の柔軟性を高めるストレッチングを行い、テーピングはその補助として活用すべきである。関節の靭帯や筋肉の位置、作用などを十分に理解したうえで行わないと全く効果がなく、逆に間違ったテーピングで関節を痛めることもあるので注意が必要。