半月板の損傷(香川スポーツ1998年7月23日掲載)
スポーツ選手に限らず、「よく膝に水がたまる」とか、「階段を降りたり、しゃがんで立ち上がる時に、またスポーツで左右にステップを踏もうとして、膝に痛みやひっかかりを感じる」と訴えてくる人が多い。このような症状が出た場合、まず半月板損傷が疑われる。
一般に半月板とは、膝の内側と外側にある三日月状の薄く柔らかい線維軟骨(長さ約40_、幅約8_、厚さ4〜1_)のことをいう。とくにジャンプして着地した時にかかる体重の負荷を分散し、膝の揺れを防止して安定させる大切な機能を果たしている。つまり膝に与える衝撃を和らげるクッションのような役目(図参照)。そのため万が一、片側の半月板に全体重と体のねじれが加わると柔らかい半月板はちょっとした力で簡単に断裂してしまう。これが半月板損傷である。とくに根性物語の象徴とされていた「ウサギ跳び」は最も危険な動作である。
時に小中学生が、膝がまっすぐ伸びず痛みを訴えることがある。これは、膝の外側円板状半月板が断裂している場合があり、注意が必要(写真参照)。一般にこの円板状半月板は、先天的に約25%の人が持つといわれる。これは半月板が円盤のように丸く厚い形をしており、普通の三日月状の半月板よりも容易に損傷しやすいのが特徴だ。
損傷の程度を調べる方法としては、まず関節造影検査がある。造影剤を関節内に注入し、レントゲン撮影するもので、ほぼ90%の診断的中率があるといわれる。そのほか、MRI検査もあるが、医療費が高価で、的中率はやや劣る。最終的に手術をするかどうかの段階では、関節鏡検査が必要となってくる。
半月板を損傷した人は、歩いたり走ったりする時、サポーターを着用し、しゃがんだり、膝をつく動作を出来るだけ避けることで、痛みがなく、軽い運動も可能。自宅でリハビリに励むこととスポーツの活動レベルを下げることで、膝の症状はさらに軽くなる。
一般に、半月板を損傷した場合と手術後のリハビリには3つの段階がある。
第1はもっとも短い期間(約3週間)で、軽い運動をしながらの安静である。
第2ではさらに運動量を増やして、膝の前後を支える大腿四頭筋とハムストリングの筋力強化訓練、そしてこれから筋肉の柔軟性を増すストレッチング体操を中心に行い、筋力と耐久力を回復させる。これは、損傷後2週間で15%、1か月後には30〜40%の筋力の減少が認められるためである。また体重が5キロ増えるごとに、膝にかかる荷重が20キロ増すといわれている。このため過剰な体重は減らし、筋力の強化が、損傷の予防と手術後のリハビリにもっとも重要である。
最後の第3は、目標のスポーツができるようになるための完全回復を目指したコンディショニングづくりと、損傷の再発防止や競技力向上の専門的なトレーニングを行う。
半月板損傷後、約3か月でリハビリの効果がなく、膝の痛みや腫れが続く場合、関節鏡手術で損傷した部分だけを切除する「半月板部分切除術」が必要となる。最近では、半月板を縫い合わせる縫合手術もあるが、スポーツ復帰に半年から1年という長期間を必要とし、再断裂の危険もあるので、その適応は若年者に限られる。