中高年のウオーキング(香川スポーツ1998年11月26日掲載)
高齢化社会を迎え、健康管理に対する関心が高まる中、自ら積極的に何らかの運動をしよう、したい、と考えている人が増えている。その中で最も多いのが、ウオーキングだろう。朝夕、スポーツウエアと本格的なシューズに身を固め、さっそうと歩く中高年の姿をよく見かける。“いつでも”“どこでも”“だれでも”できるウオーキング。今回は、その効果や注意点について書いてみた。
「老化は脚から」といわれるように、脚力は若い時に比べて、65歳までに約20%低くなり、それとともに、筋肉や靭帯の柔軟性、弾力性、さらに平衡感覚やバランス感覚、持久力も低下する。年齢とともに関節の軟骨に変性が生じ、骨は萎縮し、その強度も低下等々・・・。つまり、疲労しやすい、転びやすい、転ぶと骨折しやすいのである。
が、毎日の習慣づいたウオーキングは、こうした老化によるけがの予防に効果がある。その医学的効果はもっと多岐にわたり、@呼吸循環機能の向上A血液成分の改善B安静時の血圧の低下C体脂肪率の減少にあると言われている。
ウオーキングにより、肺や心臓の機能が向上し、体力のバロメーターである最大酸素摂取量が増加、コレステロールの中でも、特に体に悪いLDLコレステロールの減少と、体に良いHDLコレステロールの増加で、血液成分の改善が起きる。また、普通の日常生活での最高血圧の低下や、体脂肪率の減少が起こる。こうした成人病を引き起こしやすい因子の改善が、老化を防ぎ、『元気で長生き』に大きな効果をもたらす。
脂肪を減らし、減量したい人にとっても、ウオーキングは有効である。脂肪を減らすために必要な一日の最低運動量は300キロカロリー。これはアメリカスポーツ医学会の公式見解で、これだけのカロリーを消費するには、例えば体重70キログラムの人は、時速4キロメートルで1時間30分のウオーキングを要する。しかし、これを毎日持続させるには相当な覚悟と時間が必要である。
心臓病を有する人は、主治医の指導のもと、時速1・6キロメートルのゆっくりしたウオーキングから始めるのが良い。運動によって呼吸数・心拍数が増加し、血圧の上昇によって活動筋への酸素供給量は増えるが、心筋への酸素供給が不足するためである。
脳卒中を起こした人は、再発が多い2年間は、医師の注意をよく聞き、無理をしないこと。歩行が安定し、スピードや持久力が確保できてから屋外でのウオーキングを楽しむことが大切。
変形性膝関節症など、下肢に支障がある人は関節に無理がかからないようサポーターを着用したり、衝撃吸収用シューズを履き、アップダウンのある坂道は避けて平らな道を選ぶこと。ツエや手押し車を友達にしてウオーキングしよう。
さらに美しい自然を満喫したい気持ちに駆られ、街角のウオーキングから山登りに移行する人も多い。初めて高い所に登ると、吐き気や頭痛などの急性高山病にかかる恐れがある。これを予防するには、@あまり早く・高く登らないA初めて到達した高所では泊まらないB1日に登る高さは300〜600メートルまでにとどめることである。
これまでの様々な研究データから、ウオーキングは歩幅60センチ位、時速3キロメートルの遅歩き〜時速6キロメートルの速歩き(個人の状態に合わせて)で〔1日1回30分以上を週2回以上〕〔または、週1回なら1時間以上〕が望ましいとされる。いずれにせよ、自分の生活パターンにあった『時間を見つけて歩く』を生活習慣化すればよい。長い人生を考えると、健康は何物にも変えがたい。ウオーキングは、その安全、簡便、有効性から、素晴らしいスポーツといえよう。
実は、僕も以前から近所の青年団の仲間から、早朝ウオーキングに誘われている(50歳でも青年団員。これも超高齢化?)。今のところ、暇ができたら診療、ラグビー、畑仕事プラス、ウオーキングをと思っているのだが・・・。こんな言い訳をしているようではダメ。くれぐれも真似をしないように。