膝の棚障害(香川スポーツ1998年3月26日掲載)

 

先月、読売ジャイアンツのM選手が、膝の痛みで十分に練習が出来ないと話題になった。その原因は、棚障害だと言われている。
 

 棚障害とは階段を上る時や、椅子から立ち上がる時、“コツッ”と音がして、膝蓋骨(いわゆるお皿)の内側に痛みを伴うもので、野球、バスケット、バレーボール、ハンドボールなど、膝の屈伸と打撲を伴うスポーツ種目によく見られる。医学的には、関節を包む膜の一部である棚状の滑膜ヒダ(いわゆる棚と呼ばれる)が厚くなったり裂けたりして、曲げ伸ばしの際にお皿の下に挟まれ、炎症と痛みをきたす病気である。生まれつき2、3人に1人は棚を持っているが、一般的に痛みを伴わない。

 予防としては、運動する2時間前から使い捨てカイロで膝を温める。さらに運動するときは、お皿を内側に押さえるように伸縮テープで固定し、その上から膝のサポーターを使用するとよい。また、湯船の中で、膝を抱えるように曲げ伸ばしを行い、入浴後は仰向けで膝を伸ばしたまま脚を上げ下げして、膝の周りの筋力を強化する。とくに日ごろから、膝を冷やさないことが大切だ。

 これらの予防と同時に、激しい運動を避けることで、約2ヶ月後、8割の人は自然に痛みが消失する。それでも痛みがある時は、関節内へのステロイド注射が効果的。ただし頻回の注射は危険である。

 膝に水がたまったり、3か月以上、痛みが続く場合は、関節造影かMRI検査が必要。最終的には、棚の状態を関節鏡で見てから手術する。

 湧永製薬に所属し、全日本ハンドボールのエースとして活躍しているN選手も7年前、棚障害で悩んでいた。彼も関節鏡手術で裂けた棚を切除し、1か月後には試合に復帰した。関節鏡というと、聞き慣れない人も多いかと思うが、20分程度で終わる簡単な検査・手術である。入院しなくても外来で出来るし、術後、約1週間で軽いスポーツをする程度に復帰できる。